111 / 226

君と会える日後日談(4)

「時雨……? どうしたんだよ」 「皐月くん……っ」 「時雨……?」 「ごめん、な……さい、」 「何が、だよ」 「何をしたって、雨じゃなきゃ、ダメなの……っ」 時雨の言葉を聞いて、俺の手からホースが離れた。くねくねしながら水を撒き散らし、地面に落ちていく。 「皐月く、ん、ごめん、なさ、い……」 「……っ、」 何度も何度も、時雨が謝罪の言葉を口にする。 俺はそんな時雨の言葉に、自分がしたことをひどく後悔した。 晴れの日でも曇りの日でも、雨の日みたいに一緒にいたいと願う気持ちは、俺よりもずっとずっと時雨の方が大きいに決まってるのに。 普通に過ごしたいと願う気持ちは、時雨の方が大きいに決まってるのに。 だから、どうしたら見えるようになるかなんて、時雨自身が色々と試しているよな? それでもダメだったから会えるのは雨の日しかないんだ。 「……ごめん、時雨」 俺は、自分のことしか考えられてなかった。 時雨を傷つけてしまった。 「時雨、ごめん。ごめん、俺……」 「さつき、くん、ごめんなさい……」 傷つけたかったわけじゃない。 ただ君が見えるようになったらって、君と一緒にいられる日が増えたらって。 ただそれだけの思いだったんだ。 ごめんな、時雨。 俺たちはその後、もう涙が出なくなるんじゃないかっていうくらいに、二人でずっと泣き続けた。

ともだちにシェアしよう!