113 / 226
君と会える日後日談(6)
公園に着くと、俺たちはトンネルみたいな形をした遊具の中に入った。
思った通り、雨の日に公園に来る人なんかいなくて、俺と時雨の二人だけ。
雨はいつだって、俺たちにとっては特別だ。
「公園を二人占めだね」
にこにこ笑って、時雨がそんなことを言う。
俺は胸がぎゅうっとなって、繋いでいた手を離し、今度は時雨を強く抱きしめた。
とくとくと心地よい心音に、温かい体。
あぁ、俺の腕の中に時雨がいる。
温もりを、感じられる。
「時雨」
名前を囁き時雨の肩に顔を埋めると、俺の背中に時雨の手が回された。
「時雨、この間はごめんな」
「ん……。もういいよ。こっちこそごめんね?」
ぎゅっと、時雨が抱きしめる力を強める。
俺は顔を少し上げて、時雨の頬にキスをした。
「皐月くん、あのね」
「ん?」
「この間のこと、確かにちょっと悲しかったよ。皐月くんにつらい思いをさせちゃったんだなぁって、何で僕はこんな体なんだろうって」
「……っ」
「だけどね、それ以上に嬉しかったんだ。皐月くんが僕と一緒にいない日でも僕のこと考えてくれて、会いたいって思ってくれてることが」
「時雨……」
「僕ね、皐月くんを好きになって良かったって思うよ。今日だって、すぐに会いに行こうとしてくれたことも嬉しかったんだ」
“僕ってすごく愛されてるね”
へへっと笑って、時雨がそんなことを言う。
声が震えているなぁ、なんて思っていたら、俺の胸元がじわりと熱くなった。
時雨、泣いてるな。
俺は抱きしめる力を緩めると、時雨の頬を両手で包み込んだ。それから頬を伝う涙を、親指の腹で優しく掬う。
ともだちにシェアしよう!