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幸せのモヤモヤ(2)

「変なんだ」 「だから何が?」 「モヤモヤするのに、それが幸せなの」 「ん?」 “言ってることがよく分からないよ”って、彼が困った顔をする。 言ってる本人が分かってないのだから、そんな反応をされても仕方がない。 「僕も分からない」 つられて僕も困った顔をすると、“しわが寄ってる”って眉間を人差し指でぐりぐりと押された。 「あー、でも、」 彼の手がするりと下りてきて、僕の頬に触れた。それからにこりと微笑んで、だけどすぐに目を逸らして。 空を見上げ、くしゃくしゃと髪を弄りながら、小さくぼそりと呟いた。 「……そういうの分かるかも」 って。 「分かる、の?」 「うん、」 少しの沈黙の後、空へと向けられていた目線がまた、僕に戻される。 じっと見つめられ、ドキドキしながら、僕も同じように彼を見つめた。 「俺もね、モヤモヤすることあるよ」 「え?」 「どうしたら伝わるかなって、モヤモヤしてる」 「ん……?」 「もしかしたら同じかもね。モヤモヤの原因」 「……?」 “そうだったらきっと、今までよりもっと幸せになれる気がする” ぽんぽんと僕の頭を撫でて笑う君の笑顔が、何となくだけれど、いつもより優しい気がした。 END
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