123 / 226

強がりないちご(5)

もうやだ、本当にやだ。 自分が怖い。さっきから何をしてるんだ。 森川の声が、リアルに脳内で再生される。 塞いだところでどうにもならないのに、俺は思わず耳を塞いだ。 ばくばくとうるさい心臓。 森川のこと考えただけでこんなふうになってしまうだなんて、俺はかなり重症だ。 これ以上好きになってしまったらどうしよう。 気持ちがいつバレてしまうか分からない。 いつまで、俺が黙っていられるかも、分からない。 ふとした瞬間に爆発してしまったら、俺はどうなるんだろう。 「ああ! 最悪だ!」 誰かを好きになるって大変なこと。 色んな感情に振り回されてすごく疲れるなぁ。 俺はパンパンと頬を叩いて、ベッドから起き上がった。  面倒だからって、いつまでも寝てるからいけないんだ。 起きなきゃ起きなきゃ。 立ち上がり伸びをすると、それから軽く体を捻ってストレッチ。 窓を開けると心地よい風が吹いて、少しだけ気持ちが楽になった。 部屋にこもってると思考もじめじめしてくるから、どこかに出かけた方がいい。 そういえば最近、近くに書店ができたって誰かが言っていたっけ? そこにでも行ってみようかな。 「よしっ!」 俺は適当に服を選び、出かける用意をした。

ともだちにシェアしよう!