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強がりないちご(7)
これだけ考え事をしているのに。
周りは雑音にしか思えないお客さんの声で騒がしいのに。
その中で聞き取れるのは、アイツの声だから。
「……っ」
さっきまで会いたいってずっと考えていた森川が、ここにいる。
俺は手に取っていた漫画を置き、後ろを振り返った。
「もりか……、」
だけど、視界に入ったのは森川だけじゃなかった。
確かにそこに森川はいたけれど、その隣には女の子がいた。
白いふわふわのワンピースを来た、髪の長い可愛らしい女の子。
「……っ、」
その子が手に持っている漫画を見て、二人で楽しく笑い合っている。
森川の笑顔も優しい。
どくん、と俺の心臓が鳴った。
森川って、彼女いたんだ。
見たことない子だから同じクラスではないことは分かる。
けれど他のクラスにいたとしても学校でそんな噂は聞かない。
もしかして他の高校なんだろうか。
だから俺も、今まで知らなかったってこと?
「……ばかじゃん」
知らなくて、一人浮かれてた。
森川の言葉や態度にドキドキして、森川に片想いして。
ばかじゃん、俺。
それに森川も最悪だ。
彼女いるとか、俺、そんなの聞いてない。
俺はさっきまで買おうか悩んでいた漫画を元の場所にそっと戻し、二人に背を向けるとそのまま店を出た。
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