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強がりないちご(8)

森川は俺に気付いていないんだし、気付いたとしても追いかけてくるはずもないのに。 俺は逃げるようにして、家まで全速力で走った。 「もり、かわの、ばかっ」 胸が痛い。息も苦しい。 「ばか……、ばかっ、ひぅ、」 涙が、止まらない。 「……うっ、うぁ、」   俺は明日から、どうすればいいんだろう。 森川と目を合わせられる自信がない。話すことはもちろん、笑顔を向けることさえも。 「ばかっ、ばかぁ、」 改めて思った。 俺は、こんなに森川のことが好きだったんだなぁ。 次の日、俺は朝から森川と一言も話さなかった。思った通り、顔を見ることもできない。かと言って背中を見つめていても、それだけでじわりと涙が浮かぶ。 できれば、今日は学校にも来たくなかったんだ。森川と同じ空間にすらいたくない。 色んな感情でぐちゃぐちゃになって、壊れてしまいそう。 だけど、今日は午後のホームルームで文化祭の役割を決めるって言うから。 勝手に決められても困るし、ただ今日の時間割に心の中で文句を言うしかできなくて。 「なぁ綾瀬、あのさ」 「……。」 「綾瀬……?」 森川はいつも通り話しかけてくれるけれど。 俺は森川の顔を見ることもなく、ずっと無視をした。

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