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強がりないちご(9)

昼休みになり、もう我慢できないと、俺は一人屋上に向かった。 教室にいると息が詰まるから。 新鮮な空気を吸って、少しでも気持ちを落ち着けたかった。 いつもなら近くの席の奴らと、わいわい騒ぎながら弁当を食べるのに、しばらくはそれも無理そうだ。 あぁ、一言近くの奴に声をかけてから来れば良かった。 何も言わずにいつもと違うことをすれば、みんな変に思うに決まってる。 後でどうしたのかと聞かれても困るだけだし。 あーあ、なんかもう本当に今日はダメだなぁ。 「はぁー」 ため息しか出ない。 俺は、お弁当をコンクリートの上に置き、フェンス越しにグラウンドを眺めた。 次の体育、いつも、森川とペアだ。 「やっぱり休むべきだった」 勝手に役割振られたっていいじゃないか。 俺は何を考えていたんだろう。 森川と同じやつがやりたいだなんて、そんなのはもう関係ないのに。 「綾瀬」   突然、名前を呼ばれた。振り返らなくても分かる。考え事をしていて全く気づかなかった。 屋上に来ることも間違った選択だったな。 逃げ場がない。 「綾瀬」 相変わらずグラウンドを見つめたまま、俺の体が固まる。 「……んだよ、」 小さくぼそりと返事をすると、森川が俺に近づいた。 そうしてそのまま、閉じこめられてしまった。 俺の顔の横を通り越して、森川もフェンスを掴む。

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