131 / 226
強がりないちご(13)
隠そうとしたって無駄だ。
俺はこの目で、ちゃんと見たんだから。
大好きな森川を、俺が見間違えるはずがない。
だから、こんなに悲しんでるんだろ。
こんなに泣いてるんじゃんか。
森川のことが好きだから、……大好きだから。
「綾瀬、お前、すげぇ可愛いな」
なのに森川ときたら、嬉しそうにそう言って笑った。それから俺の手首を解放すると、その手で俺を抱きしめた。
「お前ってやっぱばかだよ」
「……っ、」
「あれは俺の妹。『私の誕プレは漫画でいい』って言うから一緒に買いに行っただけ」
森川はクスクス笑って、俺を抱きしめる力を強めた。
俺の思考は爆発寸前。
抱きしめられているこの状況についていけないだけではなく、彼女ではないと言われてしまった。じゃあさっきの言葉は、俺を好きだと言ったその言葉は──。
「俺の妹を彼女って勘違いしてさ。その上、嫉妬までしちゃって」
「森川、」
「綾瀬可愛い、ばか可愛いすぎ」
“たまんねぇわ”
森川は俺の髪にちゅっと軽いキスをして、俺の肩に顔を埋めた。
バクバクと、鼓動が早くなる。
俺は、どうしたらいい?
この音も聞かれているに決まってるし、恥ずかしすぎる。
でも、でも。
これは、期待していいの?
彼女は俺の勘違いだったけど、今度こそ違う?
ともだちにシェアしよう!