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強がりないちご(13)

隠そうとしたって無駄だ。 俺はこの目で、ちゃんと見たんだから。 大好きな森川を、俺が見間違えるはずがない。 だから、こんなに悲しんでるんだろ。 こんなに泣いてるんじゃんか。 森川のことが好きだから、……大好きだから。 「綾瀬、お前、すげぇ可愛いな」 なのに森川ときたら、嬉しそうにそう言って笑った。それから俺の手首を解放すると、その手で俺を抱きしめた。 「お前ってやっぱばかだよ」 「……っ、」 「あれは俺の妹。『私の誕プレは漫画でいい』って言うから一緒に買いに行っただけ」 森川はクスクス笑って、俺を抱きしめる力を強めた。 俺の思考は爆発寸前。 抱きしめられているこの状況についていけないだけではなく、彼女ではないと言われてしまった。じゃあさっきの言葉は、俺を好きだと言ったその言葉は──。 「俺の妹を彼女って勘違いしてさ。その上、嫉妬までしちゃって」 「森川、」 「綾瀬可愛い、ばか可愛いすぎ」 “たまんねぇわ” 森川は俺の髪にちゅっと軽いキスをして、俺の肩に顔を埋めた。 バクバクと、鼓動が早くなる。 俺は、どうしたらいい? この音も聞かれているに決まってるし、恥ずかしすぎる。 でも、でも。 これは、期待していいの? 彼女は俺の勘違いだったけど、今度こそ違う?

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