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俺を愛して(8)
何が起きたのかすぐに理解できない俺の耳に、隼人がキスを落とす。
それから首筋へと舌を這わせペロリと舐めた後、そこを吸い上げた。
少しだけ痛みが走るその場所に、キスマークを付けられたのだと分かる。
だけどどうして、そんなことするの。
「最初から、そうやって言えば良かったんだよ」
「隼人……?」
最初から言えば良かったって、何を?
俺がさっき隼人に言ったことを?
言ってしまったら嫌われるだろうって、ずっと言わなかったのに。
それを言えば良かっただなんて、意味が分からない。
この言葉は、どう解釈したらいいのだろうか。
勝手すぎる隼人に戸惑うし、思考が追いつかない。
そうやってしばらく黙っていると、頭上でクスリと笑い声がした。
「あのな、俺に抱いてってせがむ奴は、みんなそういうことに慣れてんだよ。自分に自信があって、どうしたら気持ちいのかってのも全部分かってる」
「……っ、」
「でもさぁ、体は気持ち良くなっても心は全然満たされねぇの」
隼人はそこまで言うと、俺を抱きしめる力を緩め、ちゅっとおでこに軽いキスをした。
そんなキスにさえ、俺の熱が上がる。
さっきからこうやって今までやってくれなかったことをして、優しさを見せるなんて。
「あー、つまらねぇって思ってる時に、絶対慣れてねぇだろって感じのお前が、ぷるぷる体を震わせて、“好き”なんて言うから。……なんとなく、コイツだったら満たされるかもって思った」
“よく分かんねぇけど”
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