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俺を愛して(9)

そう言って、見たことないくらい温かな笑顔で隼人が笑った。 もうそれだけで胸がいっぱいで、じわりと目頭が熱くなる。 「じゃあ恋人にって、そうなったはいいけど、お前は何も考えてること言わねぇじゃん。俺はてっきり甘えてくる奴だと思ってたからさ」 「……っ、」 「けど、その割には俺が会いに行くと、すっげぇ嬉しそうに笑うだろ? だからさ、俺が来るのを待ってるだけじゃなくて、もっと感情出せばいいのにって思ってたんだよ。鍵が欲しいだなんて言って、こんな酷いことしたのもそのせい」 「隼人っ、」 「だって気に入らねぇだろ。散々遊びまくって余裕こいてた俺がお前一人のことで、いっぱいいっぱいになるんだぜ? 今までの俺じゃ、そんなこと有り得ねぇ」 隼人は顔を隠すように俺の肩に顔を埋めると、「余裕ねぇ」って小さく呟いた。 俺は隼人の髪にそっと触れ、もう片方の手を背中に回すと、回したその手にいっぱいの力を込めた。 ……隼人に、こんなふうに触れるのは初めてだ。 思いをぶつけてくれたのも、初めて。 隼人は、そんなことを考えてくれていたんだ。 やり方が酷かったのは確かだけど、ちゃんと俺のこと好きでいてくれたんだね。 「ねぇ、隼人……」 「あ?」 「俺のこと、好きって言ってよ」 「……調子に乗んなよ」 「いたっ!」 せっかくいい雰囲気だったから、隼人に我が儘を言ってみたのに。聞いてもらえず、あげく指でおでこを弾かれた。

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