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俺を愛して(10)

「……痛い」 「お前が悪い」 ごめんと謝れば、ふんって鼻を鳴らした。言いたいことを言ったから、いつもの隼人に戻ってしまったみたい。 だけど、これだけは確認しておきたい。 「ねぇ、」 「あ? 今度は何」 「……俺、隼人のこと、ずっと好きでいていいんだよね?」 これからも、恋人として。 ある意味では、これから……だけれど。 「ダメって言ったら嫌いになれるわけ?」 「なる、かも……しれないじゃん」 もしかしたら“好きでいろ”と、そう言ってくれるんじゃないかと思ったのに、やっぱり隼人は隼人だ。 甘さなんてもの、簡単にはくれない。 俺が隼人のことを嫌いになれないって分かってて、こんなこと聞くとか意地悪すぎだろ。 拗ねて見せると、隼人は俺の頬を撫で、それからニヤリと笑った。 「お前は何したって、俺のことを嫌いになんかなれない」 「なるかも、しれないじゃん!」 「絶対に無理だな」 俺は余裕の笑みを浮かべる隼人の背中を叩いた。 調子に乗ってるのは、隼人の方じゃないか。 うまく返す言葉は何もないけれど、それでも何か言い返さなきゃ気が済まないと、そう思って開いた口を隼人が塞ぐ。 それから、一言だけ。 「俺がお前を離さねぇから」 「……っ」 “一生俺に溺れとけ” 隼人からの甘い言葉。 言おうとしていた文句を飲み込み、俺はもう一度我が儘を言うことにした。 「……隼人、もう一度言って」 「ばぁか、誰が言うかよ」 “どうしても聞きたかったら、じじいになった頃に言ってやる” 悔しいけど、やっぱり好きだなってそう思った。 END

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