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もう一度この指に(1)

卒業式の後、僕は恋人の優介に手を引かれ、二人だけの秘密の場所に向かった。 秘密の場所と言っても、雰囲気のある素敵な空間なんてことはなく。 体育館の裏にある小道を抜けた、草木が生い茂っていて周りからの視線を気にしなくて良いってだけの場所なのだけれど。 こんな草だらけの場所に誰も来ないだろうって、二人だけの秘密の場所にした。 ずっと奥に入って行くと、もともと学校の敷地ではなかったのか、よく分からないけど二人がけのベンチが置いてある。 「早くここに座って」 優介は僕の肩に手を乗せ、ベンチに座らせようと上からぐっと押した。 そんなに慌てなくても自分で座るよと、笑いながらベンチに座ると、優介は満足そうに笑って僕の前にひざまずいた。 「左手貸して」 ここまで来たら次に何をされるか、何を言われるか、何となく予想がつくから。 心臓が壊れそうなくらいばくばくしてきて、僕は右手で胸を押さえた。 自然と緩む口元を隠すように俯きながら左手を出せば、薬指に指輪がはめられる。 キラキラ光るダイヤモンドは当たり前だけどついていない、シンプルな指輪。 僕はその、つるつるの表面を指でなぞった。

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