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見てるよ。(2)
でもそうしないのは、僕のエゴ。
自分から話しかける勇気も、笑いかける勇気もないくせに。
そしてこの挨拶に返事をするだけの余裕も何もないけれど、それでもこのうまくいかないたった一言のやり取りは無くしたくない。
僕と彼の、大切な接点だから。
「はぁ、」
自分の席に着くとすぐに、ため息がこぼれた。
どうして、こうもうまくいかないのか。
好きな相手に対して、僕は何もできやしない。
好きになってもらえるとも思わないし、そんなことを考えること自体図々しく思えるけど。
それでもせめて、クラスメートとしての当たり前の会話くらいはできるようになった方がいいよね。
俯いていた顔を少しだけ上げ、ちらりと笹野くんの方へ視線を動かした。相変わらず眩しい笑顔。
「はぁ……、」
彼の、笑った時の目尻と口元が好き。だってさらに優しさが増すように思えるから。あの顔で名前を呼ばれるのは本当に心臓に悪い。
「……っ、」
遠くから見ているだけなのに、頬の熱が上がった。
好きが、あふれそうになる。胸がきゅうんとして、ドキドキして、泣きそうなくらいに痛い。
彼への想いを閉じこめ続けたら、僕は一体どうなるんだろうなぁ。
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