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見てるよ。(3)
◇
「原田、次の教室一緒に行こうぜ」
教室の入り口で、笹野くんに捕まった。移動教室の時、いつもはみんながいなくなる頃に一人で行くのに、入り口で待ち伏せされていたみたいだ。
誰もいないと思っていたのに、笹野くんがひょこりと顔を出した。
いたずらな顔をして、彼が僕の手を取る。
「な、んで」
声が、裏返った。だってこんなこと、まさかの出来事。彼に握られた手が熱い。ううん、手だけじゃあない。全身が熱い。
一歩分下がると、彼が一歩分寄ってきた。俯くとすぐに、顔をのぞき込まれる。顔を上げれば、唇がぶつかりそうな距離で。
口をきゅっと結んで息を止めた。そのせいでもっと体温が上がる。
「理由とかいる? 俺、原田と行きたいなぁって、それだけなんだけど」
「……っ、」
さらりとそう言うけれど、理由は必要だよ。気になるもの。笹野くんが僕を気にかける理由が分からないから。
一人ぼっちで可哀想だから気遣ってくれるのかな。それとも本当に仲良くなりたいと思ってくれているのかな。
「原田の困った顔、可愛いね。困らせたいわけじゃないけど、いじめたくなる」
「笹野くん、僕……」
「なぁに?」
「僕っ、」
息をやっと、吐き出した。肩が上がる。彼は今僕のことをどんなふうに見ているのだろう。困った顔が可愛いとか、いじめたくなるとか、分からないことが増えてしまった。
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