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見てるよ。(4)

「変なこと言ったね。ごめん」 「……ん、」   「とりあえず、教室移動しよっか」   僕の手を握ったまま、彼が歩き出す。引っ張られるようにして僕も足を進める。 だけど戸惑いながらも欲はあるから、少しだけ早く歩いて彼の横に並んだ。 相変わらず呼吸は苦しいまま。挨拶もまともにできないくらいの好きな人に手を握られ、あげく隣を歩いてるだなんて、一気に色んなことが起こりすぎて、なんだか現実だとは思えなくなってくる。  もしかしてこれは、僕が見ている夢? あぁ、夢なのかもしれない。 だからこうやって有り得ないことが次々に起こるんだ。 「原田」 「な、に……」 「この階段を上がればもう教室に着くけど、手、繋ぎ直してもいい?」 「……え、」  「誰もいないから、さ」 僕らが教室を出たのが遅かったから、他のみんなはもう先に行ってしまったのだろう。授業開始まで残り数分。階段で騒いでいる人はもちろん、廊下からもみんなの気配は感じられない。 と、パニックになりながらも自分でも驚くくらいに冷静に状況を見ていると、笹野くんが僕の手を離した。かと思ったら、いわゆる恋人繋ぎに、繋ぎ直されてしまう。  ぎゅっと握られ、彼の体温がはっきりと伝わってくる。 ちょっと待って。やっぱりこれは夢じゃないよ。

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