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見てるよ。(8)

「原田、起きて」 「……ん、」 笹野くんの声がした。僕の名前を呼ぶ彼の声。それに、肩を叩かれている。 笹野くんが僕のところに?どうして?今度こそ夢? ───ん? 夢? 「はっ、」 「うぉ。起こしたのは俺だけど、いきなり顔上げるとびっくりするわ」 顔を上げると、優しい笑顔の笹野くんがいた。キョロキョロと周りを見渡すと、教室には誰もいない。 「もう授業終わったぞ。原田、爆睡しすぎ」 「……ぁ、」 考え事をしていたら、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。頭がぼーっとする。 ぱちぱちと瞬きをすると、まだ寝ぼけてる? って、笹野くんは僕の頬に触れた。ふにふにと軽く摘ままれる。 少しの痛みと彼の温もり。 これは夢じゃない。また彼が僕の近くにいて、触れてくれている。 「ほっぺが赤くなってるね。寝てましたって顔だ」 「……で、」 「うん?」 「……み、見ないで、」 「やだ、見るよ。可愛いから」 僕の頬に触れている彼の手を避け、照れて顔を隠すと、その手を掴まれる。あまり力のない僕が彼に勝てるはずもなく、あっさりと顔を見られてしまった。 俯いたところで、彼は顔をのぞき込んでくるから意味がない。 目線を逸らすと、「照れてるの?」ってくすりと笑われた。 「原田は口数少ない分、表情によく出るよな」 「え?」 「俺はお前が何を考えてるか、すぐ分かるよ」

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