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見てるよ。(13)

ちゃんと見る、の意味は分からないけれど、笹野くんと僕じゃ意味が違う。 笹野くんだって僕のこと、僕の思うようにはちゃんと見てくれるはずがない。 僕は彼のことを好きだし、そういう気持ちで見ているんだから。 教室の入り口に右足だけを引っかけ、僕は廊下へと思いっきりこけた。持っていたテキストとペンケースが飛んでいく。 ペンケースは缶でできているから、落ちる時にガシャンと大きな音を立てた。中に入ってたペンが、いい感じに散らばっていく。 どうしてこうも大胆な行動に出たのかは分からないけれど、その分、こみ上げてくる恥ずかしさがとんでもなかった。 「原田……?」 「……ぁ、」 大丈夫かと、こけた僕のところへ笹野くんが心配して戻ってきてくれた。彼と一緒にいたグループの子は、その場から僕たちの様子を見ている。 「原田、大丈夫? 足は痛くない?」 「い、痛い」 「くじいた?」 「……かも、しれない、」 今日の僕はおかしい。こんな嘘までついてしまった。足が痛いはずないのに。そもそも、こけたわけじゃないんだから。こけたけどこれはわざとだし、本気で痛くはない。 「俺、原田を保健室に連れて行くわ。お前ら先に行ってて」 笹野くんはみんなにそう言うと、自分の教材を廊下に置いた。 「え、あっ、だめ、だよっ、」 何をするかと思えば、いきなり僕の手を引き自分の方に乗せるように促した。それから、ひょいとお姫様だっこをしてくれた。僕は細い方だけれど、笹野くんと身長が変わらないから重いはずだ。

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