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見てるよ。(16)
気になって声をかけたけれどびくびくされてしまったから、慣れるまでは挨拶をすることにしたんだと、彼は穏やかな口調でそう言った。
「けどさ、ずっと変わらなかっただろう? 原田はいつまでも俺のこと遠い存在みたいに扱うし」
「……っ、」
「俺のこと好きで、俺のことを見ているはずなのに、俺の気持ちまでは見えてないんだなぁって。そう思ったら、意地悪したくなった。だってほら……、こうやって言ってるのに、原田にはまだ見えてない」
「え、あ……」
返す言葉が見つからない。だって、笹野くんの気持ちなんて、分かるはずがないもの。
それに、僕の気持ちはバレてたんだって、それで頭がいっぱい。
こっそり見つめていたのもバレていて、好きだってこともバレていて。
それなのに笹野くんは、僕のこと気持ち悪いとは思わないのかな?
さっきだって嘘をついていたのに。
それを責めることだってしない。
何も言うことができなくて黙っていると、チャイムが鳴った。スピーカーから聞こえてくるその音が、頭の中に響く。
「原田、」
「……っ、」
「俺が意地悪したから、原田も意地悪してる? 仕返しのつもり? それとも、本当に分からない?」
笹野くんがため息をついた。怒らせたのかと怖くなったけれど、違った。笹野くんは僕の足首にもう一度触れ、それから優しく僕の名前を呼ぶ。
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