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ゆっくりじゃあダメですか?(7)
「ゆっくりいきましょうよ、」
ね? と、反応を見ながら背中を優しく叩いていると、震えが少しだけ大きくなって、彼の目からぽろぽろと涙があふれ出した。
……あれ?
「智春さん?」
「ぁ、」
「どうして、」
しんとした部屋に、藤川さんのすすり泣く声が響く。ぽろぽろと落ちていく涙を必死に止めようと目を擦っているけれど、それでも涙は全然止まらないらしく、藤川さんは小さくうずくまってしまった。
この状況からして俺が泣かせてしまったんだろうけど、理由が全く分からない。
何か傷つけるような言葉を言った?
ゆっくり仲良くなろうと、そう言っただけだよな。
……ゆっくりが、ダメだった?
「智春さん、泣かないで。ね?」
「……ひぅ、」
俺はどうしたらいいんだ。
何をしたら泣きやんでくれる?
恐る恐る手を伸ばし、俺は藤川さんを抱きしめた。とんとんと、優しく背中を叩く。
藤川さんは俺のシャツを掴むと、俺の胸に顔を埋めた。じわりと温かくなって、涙がシャツに染みたのが分かる。
「何か嫌なこと言ったのなら、謝ります。智春さん、どうして泣いてるの?」
「……ゆっ、くり、してたら、取られるっ、」
「え?」
「康平さ……、取られ、ちゃう……」
「へ?」
ぎゅううっと、藤川さんの手に力が入った。掠れるような声で、でも確かに、嫌だという言葉が、嗚咽にまざって呟かれる。
俺が、取られるって?
誰に……?
何が、嫌?
「智春さん……?」
「今日、外回り、で、康平さん、見かけたら、きれいな女の人、と……、いた……っ、」
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