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今、君に。(1-8)
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ここ五年ほど、毎月一度だけ、敦の実家に通っている。
理由にはならないかもしれないけれど、敦の父親が死んで、おばさんが一人になったから。
敦も帰って来ないし、この家に一人きりは寂しいだろうと、そう思ったから。
憎らしかったよ、何もかも。
自分の親だって、敦の親だって、敦本人だって。
でも、もともとノンケだった敦に言い寄ったのは僕だから。敦を、巻き込んでしまったのは僕だから。
敦が家を出た後も、僕は一人、謝罪しにこの家に通ったんだ。時間の許すかぎり、何度も何度も。
『敦を許してやってください』
『僕が巻き込んだんです』
『敦は何も悪くありません』
『僕のことは許さなくて構いません』
『でも敦だけは……』
帰れと言われても、ひどい言葉を投げられても、それでも僕は通い続けた。
そのうちおばさんが一人になって、ある日言われたんだ。
『あの子は私たちが追い出したから、もういないのに、』
『あなたは何度も家に来て、謝って』
『……そんなに、敦のこと大切に思ってくれていたのね』
『ごめん、なさ、いね』
たくさん傷つくことを言われ、されてきたけど。
でも、おばさんはおばさんで敦を守りたたかっただけなんだって。
結局は誰も悪くない、悪いのはこの世界だって。
そんなキレイ事を考えたら、何かがすとんと落ちて来て、僕の中できれいにはまった。
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