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今、君に。(1-9)
僕の家は敦の家と違って、追い出されるようなことはなかったけど。
それまで向けられていた優しい笑顔も言葉も消えて、父さんはずっと厳しい顔をしていたし、母さんは泣いてばかりいた。
敦に比べたら、この扱いは我慢できるものだろうって、なんとか気持ちを持って生活していたけど、どうせなら敦と二人で家を出たかったと、関係は終わってしまったのに、ずっとそんなことを考えていた。
敦のことが頭から離れなかった。
きっと僕はこれからも、敦を思い続けていくんだろうって、どうしようもない想いを抱えて苦しんでた。
そんなある日、突然伯父さんが家に来て、僕と話がしたいと言い出した。
父さんが僕のことを伯父さんに相談したのだと思う。それも僕のことを思ってじゃなくて、どうしてうちの息子はこうなってしまったのかって方の意味で。
ただでさえ苦しいのに、とうとう親戚からも非難されるのか、なんて構えていたら、伯父さんは僕を優しく抱きしめ、それから頭を撫でてくれた。
突然のその行為に戸惑いつつも、なぜか安心し体の力が抜け、僕は伯父さんの肩で大泣きした。
伯父さんは、そんな僕を見て“泣き虫さんだ”って笑うと、それから衝撃の言葉を口にしたんだ。
『伯父さんが結婚しない理由は、仕事が忙しいからとか、興味がないからとかじゃないんだ』
『もう何年も想い合っている人がいてね、』
『でも男だから、叶わないんだよ』
『びっくりしただろ?』
『俺たちは大人だから、それなりに上手く誤魔化せるんだよ』
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