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今、君に。(1-10)
伯父さんは相変わらず優しく笑っていて、それから最後に“味方だよ”って言ってくれた。
そんなことを暴露してまで僕を励ましに来てくれたのかと、感謝の気持ちで何も言えなくなっていたら、伯父さんは笑顔のまま僕の部屋から出て行った。
何か嫌な予感がして、部屋を出て行った伯父さんについて行ったら、リビングにいる父さんにも僕にしてくれたその話をしたんだ。
『好きになってしまったら、もうどうしようもないんだよ』
自分の兄さんにそんなこと言われたら、さすがに父さんも何も言えなくなったらしい。
許してくれたのかは分からないけれど、責められることもなくなった。
時々何か言いたそうに僕を見ては結局黙り込んで、その繰り返しな日が続いて。
母さんは小さくごめんねと呟いて、泣くのをやめた。
認めてもらえたとは思わないけど、そういう僕を受け入れてはくれたのかもしれないと、そんなことをぼんやりと思った。
家族も何も言わなくなって、おばさんも許してくれて。
敦が帰って来たらどんなにいいだろうと、ずっと待ってたけれど。
敦は本当に何年も帰って来ないし、連絡先は変わっていて連絡も取りようがないしで。
僕はただただ彼の帰りを待つことしかできなくて、あれから未だ、彼にとらわれたまま。
それなのに、こんな突然……。
「春……」
「あつ、し……」
ずっと会いたかった人が今、僕の目の前にいる。
憎んで、恨んで、でもそれ以上に大好きで。
愛してる、大切な人。
お土産に持って来たスイカが、どんっと大きな音を立てて転がった。
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