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今、君に。(2-2)
「春、今までありがとう。それから、ごめんな」
二階の部屋に上がり、俺たちは二人きりで話すことにした。
感謝と謝罪の言葉を言ったものの、これだけで済む話でもない。
深く頭を下げ、もう一度言葉にすると、春は慌てて俺に頭を上げるように言った。
「ううん、本当に気にしないで。最近じゃおばさんも元気になってきて。敦の小さい頃の話とかしてくれるようになったし、楽しかったよ」
ふわりと、あの頃と同じ笑顔で笑う春に、胸が締め付けられた。
あぁそうだった。こうやって柔らかく笑ってたって、頭の中に残っている泣き顔と一緒に思い出が頭の中に流れ出す。
俺は、たくさん春を傷つけたのに。
それなのに、こんなふうに話をしてくれて、笑顔をまた、俺に向けてくれるのか。
何も変わらない。春の優しさはあの頃のまま。
だけど俺は自分のことでいっぱいいっぱいで、春を捨ててしまった。
そうやって自ら手を離したくせに、いまだに春を想っていて。
今こうして春を目の前にして、色々な感情が混ざり合って複雑だけれど、でもその中で「もう一度自分のものにしたい」って気持ちだけははっきりとしている。本当に勝手すぎるよ。自分に自分で呆れる程。
春に、この気持ちを伝えて良いものだろうか。
一度は俺が苦しめた春に、今も想っているとそう伝えるのは、許されないことかな。
「……っ、」
春の笑顔は、付き合っていた頃によく見せてくれていた笑顔と変わらなくなっていて。
それなのに俺が、“もう一度”を願ってしまったら?
あの頃の傷を開くことにはならないか?
この笑顔を、俺の勝手な想いで壊してしまうことにはならない?
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