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ミサンガ続編(3)
「祥汰」
「……、」
しばらく無言の祥汰に、俺の期待がさらに膨らむ。
その少しだけきつく結ばれた口からは、どんな言葉が出てくるの?
“やだっ、別れたくない”
“俺は雅宏が好きなのに”
取り乱して、そう叫んでくれる?
俯いた目からは? 大粒の涙を流してくれる? 俺への想いを、そんなふうに見せてくれるの?
「祥汰、」
「じゃあ、」
だけど祥汰が放った言葉は、たったの一言。
「……幼なじみに、戻ろう」
それだけだった。
少しの涙もこぼさず、文句の一つも言わず。
エイプリルフールの嘘だよと、俺に弁解もさせずに、アイツは自分の部屋に帰って行った。
後ろで隠していた手が、さっきまでと比べものにならないくらいに震える。
泣かなかった祥汰の代わりに、俺の目から涙が出てきた。
「嘘だろ……」
俺のこと好きじゃなかったってこと?
俺たちは、こんなにあっさりと終わってしまうような関係だったのか。
それこそこの祥汰の反応がエイプリルフール用じゃ? なんて考えは浮かばない。祥汰は本気だった。俺の嘘の別れ話に、本気でそう答えたんだ。
「ははっ、有り得ねぇ……」
馬鹿なことをした。
こうやって終わってしまうくらいなら、俺が欲張らずに我慢してるほうがマシだった。
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