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ねぇ、こっち向いてよ。(3)

「藍ちゃん好き」 「うるさい。もう、どっか行けよ」 懲りずに、今度は指先でぷにぷにと頬をつつくと、机の下で足を思いきっり蹴られた。 だけど、俺の頬は緩むばかり。 この痛みも俺だけのもの、だなんて俺はかなりの重症だろう。 「どっか行けって言われてもなぁ、俺はこのクラスだからね」 俺は藍の後頭部に素早く手を回し固定すると、唇の端にキスをした。 そこから耳まで一気に舐めあげ、最後に耳たぶをカプリと噛む。  思わず漏れた可愛い声を逃さずにしっかりと聞いて、ふっと息を吹きかければ、藍の肩がびくりと震えた。 「今日はここまででやめてあげる。今度は唇だからね」 調子に乗ってそう言葉にしてみれば、藍は金魚みたいにぱくぱくと口を動かした。それから両手で顔を隠すと、そのまま机に伏せてしまった。 藍ちゃん、そんなことしたら可愛い顔が見えなくなるだろ。 「もう、お前本当にやだ……」 「何が?」 「教室で、こんなこと……っ、」 「……教室じゃなければいいんだ?」 からかうように言えば、藍が慌てて顔を上げる。 何が嫌なのか。こんな顔しちゃってさぁ。 「違っ、」 「違うって? もう遅いよ」 今日は藍ちゃんを家に連れて帰ろうかなぁ。 そうやって半分以上本気の冗談を言うと、藍は俺の頭を叩いた。可愛い手の感触を頭に感じた。 そんなことが嬉しくて微笑むと、藍にそれが伝わったのか、慌てて手を引っ込めてしまった。

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