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ねぇ、こっち向いてよ。(5)
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自分でも可愛い顔をしていると、自覚はある。
小さい頃からずっとそう言われてきたし、告白だってたくさんされてきたから。
もちろん、本当に好きな人にも。
でも俺は、この顔が好きじゃない。この顔で良かったことなんて一度もないもの。
どんなに俺のことを好きだと言っていても、最後には必ず、みんな同じことを言うんだ。
『可愛いのは顔だけなんだな』って。
一年の頃から大和のことは知っていた。
同じクラスの女子たちが、かっこいいと騒いでいたから。彼になら遊ばれても良いと、そう言っているのを何度も耳にした。それに、女遊びがすごいことは、よく噂で耳にしていたから。
彼には全く良い印象がなくて、どうしてモテるのか不思議でならなかった。
二年になって同じクラスになったと知った時、なるべく関わらないようにしようと心に決めた。
それなのにどうしてか席替えをする度に、必ずと言っていいほど彼の前後左右の席になるものだから、関わらざるを得なくなって。
その結果が、今に繋がっているのだと思う。
大和に好きだと言われた時、可愛かったら誰でもいいのかと腹が立った。
俺は恋愛対象が男だから、そういう意味では良かったのだけれど、あいつの周りにベタベタくっついているあの女どもと同じように見られていたのかと思うと、ものすごい嫌悪感がわいた。
けれど、どうやら本気らしくて。
大和は俺に告白して以来、女子と遊ぶことはなくなった。周りの反応を見てれば分かるし、噂も聞かなくなったから。
いつも俺の傍にいて、好きだの可愛いだの、よくもまぁ飽きないなってくらいにしつこく言ってくる。
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