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ねぇ、こっち向いてよ。(6)
いつまで大和とのやり取りが続くのかと思っているうちに、もう二ヶ月近くが経とうとしている。
そうなると俺の気持ちだって、少しは揺らいでくるわけで……。
大和は女遊びが激しいってイメージのせいで俺の中で印象が最悪になっていたけれど、実際の彼はそこを除けばわりと優しくていい奴だから。
普段は変な発言ばかりで困ることが多いけれど、でも、優しさも感じてはいるの。
だけど、怖いんだ。
俺は素直に甘えることなんかできないし、きっと付き合ってもこんな調子だろう。
そうしたら大和だって、『可愛いのは顔だけなんだな』って思うに決まっている。
それにいくら顔が可愛くても、俺は男だから胸もないし、触ったって柔らかくもない。
女の子が大好きな大和には、楽しいことなんか一つもないじゃないか。
「らーんちゃん」
「うるさい、」
最初は甘ったるくて嫌いだったけれど、名前を呼ばれるの、最近はあまり嫌じゃなくなった。
くすぐったくて、温かくて。優しいその声に、なんだか安心するようになった。
「俺のこと好きになった?」
「……ならない、」
「今さ、間があいたよね?」
「あ、あいてない!」
「え~、嘘だ。間があったもん」
照れ屋さんだなぁと、大和が俺の頬を指先でつつく。
ふざけてるのに、俺を見つめる彼の目は真剣で。
胸が、きゅんと鳴った。
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