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ねぇ、こっち向いてよ。(7)
*****
「らーん、」
「……。」
「らーんちゃん」
「うるさい、」
昼休みになり、俺は真っ先に藍のところへ行った。前の席に座り、本を読む藍を見つめる。しばらくそうしていれば、「何?」と藍が聞いてくれると思って。
けれど何の反応も示さずに本に向き合っているから。痺れを切らした俺は、藍の読書の邪魔をすることにした。
「ねぇねえコレ見て」
「今、本読んでるから」
一日に何度も行われるこのやり取りだけれど、今回だけはどうしても譲れない。
「ちょっとでいいから、コレ見てよ」
「あ!」
俺は藍が読んでいる本を無理矢理閉じた。
それから俺を睨む藍の目の前に、ある物を突き出す。
「明日は土曜日です。だから藍ちゃんは俺と一緒にコレを見に行きます」
「……あ、」
俺が見せたのは、映画のチケット。
昨日から藍の好きな小説の映画の公開が始まっているから、わざわざこうして準備したのだ。
これなら一緒に行ってくれるだろうと思って。
案の定、藍は良い反応を見せてくれた。
俺を睨むために細められていた目がゆっくりと開かれ、藍の口元がだんだんと緩んでいく。
俺だってね、気まぐれに読書の邪魔ばかりしてるわけじゃないんだよ。
「行きますか?」
「……っ、」
「らーんちゃん、」
「大和は、卑怯だ」
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