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ねぇ、こっち向いてよ。(13)

「大和じゃん! 久しぶり!」 振り返ってみれば、そこにいたのは知らない女の子。顔は大きな目が特徴的で、長い黒髪は胸元まである。 えっと、……誰だっけ? 着ている制服から、隣町の高校の子だってことは分かる。 藍を好きになる前は、誰それ構わず遊んでいたから。紹介された子やナンパした子がたくさんいて、他校の子はほぼ誰も覚えていない。 「今、何してんの? ここ数ヶ月ずっと付き合い悪いって聞いてるよ。ねぇ、一人ならさ、また遊ぼうよ」 強引に腕を絡めてくるその女の子に、過去の自分を呪った。適当なことをしていたからこうなるんだ。 最悪だ。こんなところ、藍ちゃんに見られるなんて。 「いや、俺、一人じゃないし」 俺がたくさん遊んでいた頃を、藍は知っているし、だからきっと最初は俺に良い印象を持ってくれていなかったわけで。その印象をやっと、こうして出かけてもらえるようには変えることが出来たというのに。 それに今日はすごく機嫌が良かった。 有り得ない。よりによって、このタイミングとは。   「俺さ、もう遊ぶつもりもないし。ごめん無理だわ」 「えぇ~、どうして?」 「大切な人が出来たから、もう遊ばないの。じゃあね」 俺は、絡められた腕を強く掴み、引き剥がした。痛いと文句を言われたけれど、気にも留めず、レジに向かおうとする藍の隣に立った。 トレイの上には、候補に上がっていなかったパンも並んでいる。 「藍ちゃん、ごめんね」 「何が?」 「一人にしちゃって」 「……別に。パン決まったし。……それより、良かったの?」 「え?」 「……ううん、何でもない」 藍は小さく笑って、「早く食べたいね」とだけ言って黙ってしまった。

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