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ねぇ、こっち向いてよ。(15)
あぁ……、俺って本当に可愛くないなぁ。
可愛いのは顔だけだと、言われてしまう原因をこうして自分で作り出している。
その言葉に傷つけられたとそう思ってきたけど、傷ついていたのはきっと、自分だけじゃないんだ。俺だってこういう態度で、誰かを傷つけていたはず。
そもそも、大和は何も悪くない。
女の子に話しかけられて、少し会話をしていただけ。それに対して、俺が勝手に嫉妬して拗ねているんだから。
大和に散々嫌な態度を取って来たくせに、こんなことでイライラしてばかみたい。
毎日のように伝えられる大和の気持ちを無視したり、否定したりしておきながら本当勝手すぎる。
せっかく誘ってくれたのに。どうして俺は、いつもこうなんだろう。
これなら、さっきの女の子といた方が楽しいに決まってる。
「……、」
そう考えると、何だか悲しくなってきた。
あんなにおいしそうだったのに、悲しい気持ちで食べているからか、全然おいしいと思えない。……変なの。
「……っ、」
気がつくと、俺の頬を涙が伝っていた。
一口だけかじったクリームパンも、涙の味がする。
「藍ちゃん? どうした?」
「……ぅ、あ、」
「どうしたんだよ……」
突然泣き出した俺に、大和が戸惑っているのが分かる。でも、自分でもどうしたのか分からない。大和のことを考えていたら、涙が出てきたってそれだけ。
「藍ちゃん、」
泣いてる俺を見て、大和まで泣きそうな顔になっている。そんな大和の優しさにまた、目に涙が溜まっていく。
「……や、まと、」
「うん?」
俺ね、本当は──。
「…………すき」
気づいた時にはもう、まるで息を吐くみたいに、自然とその言葉が漏れていた。
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