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第10話
「んん。」
男と老執事が抱き合っている内にリュークの意識が戻って来たようで、その声は二人の抱擁の終わりを告げるものでもあった。
「ちっ!まあ仕方ないか。」
「閣下、どうなさいますので?」
男の腕の中にすっぽりと包まれた老執事が離れ難そうに男の背中に回した腕に、更に力を込めて尋ねる。
「ん?まずはお前を離すか、名残惜しいがな。」
「私もです、閣下。このままあなたに抱かれていたい。」
そう言うと二人は軽い口づけを交わす。
「そんなふうに俺を煽るな…これが終わったら、俺の上で腰を振って乱れるお前をいくらでも見せてくれるんだろう?」
「それをあなたが望むのなら…あぁ、閣下。」
そう言うと老執事の腰が艶かしく動いた。
「おいおい、もう準備万端か?あとでここにいやってほどぶちこんでやるから、おとなしく待ってな。」
そう言って老執事を腕の中から手放すと、その尻を軽く撫でる。
それだけでとろけそうな目の老執事に苦笑しながら、男はブランのそばに行くと耳元に顔を近付けて囁いた。
「ラーマ、起きろ!」
瞬間、ブランの目が見開いた。ぐらあっと上半身を起こそうとするが、風船が萎むように体の力が抜ける。
そのままパタンと再びベッドに倒れた。
「やはり珠が必要か。」
呟いた男の耳に
「閣下!」
老執事の切羽詰まった声が聞こえた。
男はそちらを向くでもなく驚くでもなく、落ち着いた様子で懐から杖を取り出すと後ろに向かって閃光を飛ばした。
「閣…っ下。」
男の足下に老執事が崩れ落ちた。
それを見た男が
「盾にされたか…。」
そう呟いて蹲み込んだ所に、リュークが重そうな花瓶を持って立ち塞がった。
「何を、している?」
男が杖を振ろうとするとリュークが口を開いた。
「これを落とせば、こいつの命は取れなくても、それ相応の痛みは与えられる。」
それを聞いた男は、仕方ないなと言うように首を振ると、その懐に隠しておいた杖をリュークに向かって投げ捨てた。
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