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第17話
「そう、それでめでたし、めでたし…のはずだった。」
「はず?」
「そうだ、俺達の統治の王たるラーマがこの城に戻り、次の魔力使いも生まれようとしていた。しかし、いつも通りにラーマの精を合わせても何も起こらなかった。今までこんなことは一度もない。ラーマの体に一体何が起きているのか…。」
そういうと身代わりは口をつぐんだ。
「それでは…私は、この私はいったい何なんだ⁈」
しばらく黙っていたリュークがその疑問を口にした。
「私は、あなたこそが統治の王だと思っていたし、そもそもブランがこの世界から出て行った後に生を受けたはずだ。それでは、私は一体何者なんだ?」
「お前は人間だよ、本物の。ラーマもそうだ。そしてさっきの話に出てくる旅人達も全て人間だ。
ただ、産まれながらに人間には持ち得ないはずの力を持って産まれてきてしまった。そのせいで両親からも忌み嫌われ、まるで旅人のようにあちこちさすらい歩いていたとラーマが言っていた。」
「何故、私はこの世界にいるんだ?」
「お前を産んだ女が連れて来たんだ。怖いんだとさ、お前を育てることが。その未知の力が。そしてそれによって自分達家族が周りからどういう風に見られるのかが。結局のところ、お前以外の家族を守るためにお前を捨てたってことだろうな。」
「閣下、それはちょっと…。」
今まで黙って話を聞いていた老執事が身代わりの服の袖を引っ張りながら、制した。
「ん?あぁ、すまない。俺はあまり人の気持ちとやらを気にしないタイプでな。事実をありのまま言ってしまう。でもまぁ、そういうことだ。」
老執事が大きなため息をついた。
「それで… 。」
リュークがブランの顔を見つめながら口を開く。
「ブランの状態がいつもとは違うって…そしたらブランをどうしたらこの苦しみから助け出せるんだ?」
それを聞いた身代わりも老執事も顔を見合わせ首を振ることしかできません。
「私も何回かそのお手伝いをした事があります。しかし、今回のようにラーマ様の精が魔力と混ざり合わないという事は初めての状況で、何故なのかと言われても本当にどうしてなのか、残念ながら私たちにもわからないのです。」
老執事はそう言うと、下を向いた。
「この方は私達にとって、王でもあり、父でも母でもある存在。何もできない悔しさをどうかお察し下さい。」
そう言って、肩を震わせた。
その横にそっと身代わりが座り、老執事を抱き寄せ自分の膝に座らせた。
「俺達は この世界で同じ親から生まれた、いわば家族だ。お前達人間とは違う形で生まれて来たが、ラーマを愛おしく思い守りたい、助けたいと思っている。それができない悔しさ、ようやく俺達の元に帰って来たのに、もしかしたらこのまま今度は永遠に俺達の元からいなくなってしまうかもしれない。それを考えるだけで、この体が引き裂かれそうになるほどの痛みを感じている。今はもうただただ、ラーマが消え去る事のないようにと祈るばかりだ。」
そう言うと、身代わりは老執事を抱きしめてその髪に顔を埋めた。
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