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第19話

「リューク、あなたという人はいつでも私の思い通りにいかないのですね。」 そう言ってため息をつくと、ブランの目の怪しい光が消えていつものブランの瞳に戻りました。 「少し私の体が落ち着いている今の内に、あなたに誰も知らない昔話をいたしましょう。ただ、少し辛いので、あなたのここを貸してもらえますか?」 そう言って、リュークの足を軽く叩きました。 先程までの体の熱が嘘のように消え、落ち着いたリュークが頷き、ベッドに座るとブランはそこに頭を載せて横たわりました。 「あなたが聞いた話には続きがあるんです。あまりに重い、生命を作り出すという行為に疲れ果てた男はある時自分をこの世から消し去ろうとしました。しかしそれは自分の作り出したものすべてを消し去る行為でもありました。男が辛く苦しい思いをしていることに気がついた身代わりは男を苦悩から解き放とうと肉体と精神を分離させました。そしてそれによって眠りについた男は、しかしその魔力の為、精神をなくしたままでも起きられるようになり、その姿を城から消しました。人間のそばに居を構えた男は研究を重ね、自分以外の魔力と交わることで託された仲間の魔力を解放し、それによって自分と生み出したモノ達との間の紐付けを解消させることができるという契約を自分の身体と結びました。ただそれには自分以外の、人間でありながら生まれながらに魔力を持ったものと出会わなければならないという万に一つもあり得ない条件があったのです…男は半ば諦めながらも一縷の望みを人間のそばで暮らし待ち続けていました。そして運命は動き、男は自分と生み出したモノ達を唯一救える人間に出会ったのです。それがリューク、あなたです。私はあの時あまりの嬉しさに我を忘れてしまうくらい喜んでしまい、本当に今思い出してもお恥ずかしい。」 「それでなのですね。私に魔力があるというだけであのように嬉しがったあなたをずっと不思議に思っていたのですが、そういう事なら納得できます。」 「私の喜びはさておき、そういう事であなたの精を私にいただきたいのです。ここまで話したのですから、理解していただけたでしょう?これによってようやく私は私の運命から、そして生み出したモノ達から解き放たれる。」 「いいえ。ブラン、あなたはまだ私に隠していることがあります。あなたはあの時おかしい事を口走りました。あなたがこの事をしたらあなたはどうなるのですか?」 「あなたは本当に私の思い通りにはいかない人なのですね。分かりました。あなたが思っている通り、私の中に残る魔力は彼らから託されたものだけです。私のものは生命を作るときに、その核として全て分けてしまいましたから。ですので、この魔力がなくなれば、私の生もそこで終わりとなります。しかし私は十二分に生きました。それより今はこの苦しみを終わらせたい。リューク、あなたにお願いするしかないのです。私を救ってください。」 そう言うと、ブランの目はまたも怪しく光り出しました。

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