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第20話
「ブラン、こんな事はやめて下さい!」
リュークはそう言うと、ブランの目を覆い隠すように手を被せます。
いきなりリュークの手で目隠しをされたブランは、その思いもかけない行為に我慢できず笑い出しました。
「リューク、ふふふ…そんな可愛い事をしないでください。」
ブランがそう言って起き上がりながらリュークの手を目から離すと、そこには再びいつものブランの目が戻っていました。
「可愛いって…私はこんな魔力によって、あんな風にあなたを愛したくはないだけです。」
そう言うと、ブランの腕をつかみ返し、その手のひらにキスをしました。
「リュー…ク。」
ブランが顔を真っ赤にしてうつむきます。
その顎に手を添えると自分の顔の方に向かせリュークはブランの目をじっと見つめました。
「あんな目で私を見ないでください。あなたがきちんとお話ししてさえくれれば、あんな魔力なんて使わなくても、いくらでも愛してさしあげますよ。大体、私が迎えに行った時、あなたが嫌がって私を拒否したのに、ここに無理やり連れ帰って来たのは私ですよ?」
「それは違いますっ!私はただあの子供達を助けたかっただけです。心残りがあるままこの世から消えたくはなかったから…。」
「でもあの時、このままあの村で暮らしたいと…。」
「それは、あなたがまさかこの世界の住人だとは思っていなかったから。あなたが元の青年リュークの姿に戻り、この世界の話をした時、彼にあの場所がバレて、連れ帰らされると思ったのです。その為にあなたを私の元によこしたのではないかと。」
「あぁ…、そういうことですか。」
納得するようにリュークが頷くと、それを見たブランが少し悲しげな顔をしました、
「あなたは何も知らなかったのに、私が勝手に勘違いをして、あなたを傷つけてしまいましたね。」
「ブラン、そんな顔をしないでください。ただの誤解だったわけですし。ただ、あなたを愛してしまったら、あなたはこの世からいなくなってしまう。それじゃあ、私は一生あなたを愛することができないじゃないですか⁈」
「いいえ、リューク。私にはもう時間がありません。もうすぐにでもあなたの精をこの身に受け入れるしか方法がないんです。先ほどからもう我慢が…くぅっ!」
そう言って、ブランは再びお腹を抱えるようにして苦しみだしました。
「ブラン!」
リュークが抱き起すようにブランを支えると、ブランが顔をリュークの方に向け、片手でリュークの顔に触れました。
「リューク、あなたとのキスをずっとしていた時、私はあなたの魔力を少しずつ取り込んでいました。魔力は精よりも微力にはなるのですが、それでも長くこの体に取り込むことで同じような効果を得られるのです。しかし、あなたが私にキスをした時、その魔力が一気に体内に入り、すでにあと一歩というところまでになってしまったのです。」
「そんな…それじゃあ、もう後戻りはできないのですか⁈ようやくあなたの心と通じ合えたというのにっ…。」
リュークがブランに覆いかぶさるようにうなだれます。
ブランがその顔をなでながら、優しく説きました。
「リューク、私も辛いのです。あなたとはもっと長い時間を過ごせると思っていました。でも、こうなってしまってはどうしようもありません。どうか私を助けて下さい。私を解放して下さい、あなたでっ!」
そう言うとブランの目に涙が浮かびました。
それをリュークは指で拭いますが、そんなリュークの目からも涙があふれ、ブランの頬に零れ落ちました。
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