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第24話
「ブラン…ここ、今は大丈夫なんですか?」
リュークの手がそっとブランのお腹に触れます。
そのリュークの行為に、飛び上がる位にびくっと反応してしまったブランが焦って答えました。
「あっ…あぁ、はい。大丈夫です。」
それを見たリュークがふっと笑うと、ブランが顔を真っ赤にしてリュークの手をお腹からどかしました。
「きゅ、急に触って来るからっ!」
ブランが上ずった声でリュークに抗議します。
「先程はあんな術まで使って、あんな煽るようなことまで言って、私を誘惑したのに?」
リュークはブランに叩き落とされた手で今度はブランの頬に触れます。
ブランがキュッと目を瞑り、顔を真っ赤にして首をすくめます。
「…わないで。」
リュークがブランの顔をそっと撫で上げると、ブランの腰から背中がぶるぶるっと震え、リュークの手にブランの熱い息がかかりました。
その息を手に感じ、ブランを抱きしめたくなる衝動を感じながらも、リュークはそれを抑えるように首を横に振ると、ブランの顔をじっと見つめて口を開きました。
「ブラン、ブランは本当に私でいいんですか?」
リュークの神妙な声にブランがそっと目を開けると、自分をじっと見つめているリュークの視線と合いました。一瞬、目を逸らしかけたブランでしたが、しかし、リュークの眼差しに熱っぽさは微塵もありません。
リュークは静かにブランに問いかけます。
「ブランのお話を聞いていて、私にとってブランはこの世でたった一人のかけがえのない、誰も変わりにはなれない、唯一無二の人ですが、ブランにとっては人間でありながら魔力を持つ者であれば、私でなくても良かった訳ですし、寧ろ私ではなかった方が…」
そう言って、ブランから自分の手を離そうとするリュークのその手をブランがひしっと掴むと、自分の胸に当てました。
「リューク、感じてくれますか?あなたに触れられ、あなたの事を想うだけで、こんなにもドキドキしている私の心臓の鼓動を。」
リュークが頷くと、ブランがクスッと笑い、しかしすぐにまじめな顔になって、話し始めました。
「それよりも、私は貴方に謝らなければなりません。いくら私を生かすためとはいえ、あなたの心臓と私の心臓を一つにするなどという、とんでもないことをしてしまいました。」
「それは、ブランがしたわけではないですし、あの状況では最善の策だったと思います。それに…」
「それに?」
「それに、あなたと共にこの先ずっと生きることができる。ずっと共に生きられる。そして、一緒にこの世から消えることができる…ねぇ、ブラン?」
「何ですか?」
「私は、あなたのいない世界であなたよりも一秒でも長く生き延びるなんて考えたくもないんです。そして、私のいなくなった世界に、一秒でもあなたを残していくなんて事も考えたくありません。今回の事は、私にとって最高のサプライズなんです。」
「本当に?」
「えぇ…じゃあ、ブランは私でいいのですね?」
再びブランに尋ねるリュークに
「初めはあなたの言う通り、人間でありながら魔力を持つ者であれば誰でも良いと思っていました。しかし今は違います。私はリュークがいいんです。リュークでなければ、私の家族に迎え入れたあなたでなければ、嫌なんです。リューク、あなたと共にいたいんです。」
そう言ってブランはリュークにぎゅっと抱きつきました。
「ブラン?」
リュークの尋ねるのに何も答えないブランにリュークが確かめるように囁きます。
「ブラン、じゃあ、いいんですね。」
ブランの体がびくっと反応した後、耳まで真っ赤になりながらこくんと頷き、ぎゅっとリュークに抱きつく腕に力を込めました。
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