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第5話

 ――気持ち悪いって……言ってたのに。  ゲイがそんなに物珍しいのだろうか? 綾人の秘密を知った智は、隙を見てはちょっかいを出して来るようになっていたけれど、身体の関係は勿論ない。  布越しとはいえ彼が股間に触れるのも今日が初めてで、理解し難いこの状況に綾人はとても驚いていた。  いつもは……と言ってもまだ片手で数えられる程度だが、膨らみもない平らな胸を自分で揉めと命令されたり、机の上で自慰するよう強制されたりしていたから、どう反応すればいいのか分からず綾人は涙ぐむ。 「もっ……止めろよっ、俺が悪かったから……」  ゲイなだけでこんな仕打ちを受けなければならないなんて、余りに酷いと綾人は思うが、智にとっては告白自体がそれだけ不快だったのろう。 「何で? 俺が好きなんだろ? 喜べよ」 「やっ!」  片方の手がシャツのボタンに伸びて来たから、慌てて両手で胸を隠した。 「男同士なんだから、そんな恥ずかしがらなくて良いよ。巨乳じゃないの知ってるし」  ――そういう問題じゃ……。 「なんでそんなに頑なかなぁ……」  溜息交じりに呟くと、智は股間を一旦手放し綾人のネクタイをスルリと引き抜く。 「ひっ……やぁぁっ!」  次の瞬間、膝が股間へと乗せられグリグリ踏み潰され……激しい痛みに綾人の呼吸は一旦止まり、瞼の裏が真っ赤に染まった。 「最初から素直に言う事聞けよ」 「あ゛ぁっ、やぁっ!」  力の抜けてしまったところで、両の手首を一纏めにされ背後できつく縛られる。  こんなに酷い仕打ちをする男だと分かっていれば、絶対好きにはならなかったと綾人は思うが、既に全てが遅かった。 「この際だから綾人のオッパイで我慢しようと思ったのに、逃げるから悪いんだ」 「風俗……行け」 「乳輪だけなら何とか揉めるし」  ペニスを襲う痛みに耐え、必死に紡いだ綾人の言葉はだけど綺麗に無視される。  こういう行為を強いられるのはいつも週末だったから、今日は無いと考えていた自分の甘さを綾人は呪った。 「はい、ご開帳~……っえ?」 「……見るな」  楽しそうにワイシャツの前を開いた智が、一瞬にしてピタリと固まる。 「これ……」 「いっ……触るなっ」  ありえない光景に、驚いたのか声も出なくなってしまったようだ。  根元を糸に戒められ、いつもよりも随分赤く染まった綾人の小さな乳首を、興味深げに見つめてくる。 「も……見るな」 「自分でやったのか?」 「ひゃぁっ」  尖った乳首をツンと弾かれて綾人の体がビクンと跳ねた。 「何でこんな事してんの?もしかして、綾人ってホモな上にマゾな人?」 「違っ……うぁっ!」  大きく首を横に振るが、まるで聞いては貰えない。  興味深げに顔を近付けフウッと息を吐きかけてくるから、擽ったさに身体を捩るとパクリと口に含まれた。 「やっ……あぁっ」  充血した乳首はかなり敏感になってしまっていて、ザラリと舌を這わされただけで甘えた声が上がってしまう。 「ねぇ、なんでこんな事したの?」  一瞬だけ口を離してこちらを見上げた智の顔は、短絡的な綾人の想いなどお見通しだと言わんばかりの意地悪な笑みを浮かべていた。

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