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【二話】 「あーやーと、昼飯行こうっ」 「うわっ、なっ……」  突然、背後から伸びた長い腕が、ボタンの一つ外されている襟元から侵入してきて、アンダーシャツの上から胸を人差し指でグリグリと弄る。 「んっ……ちょっ、止めっ」  席は低めのパーテーションで一応区切られてはいるが、立って覗けば見えてしまうから、慌てて綾人は手首を掴むと引き抜こうと力を込めた。 「こらコッシ―、あんまり柏瀬弄るんじゃないぞ」 「いいんですよ、俺達仲良しなんだから……な」 「……離せっ」  少し膨らんだ乳輪をギュッと摘み上げられ、息が詰まるかと思うくらいの痛みと疼きに声が上擦るが、彼の背後から声を掛けて来た上司には見えていないらしく、 「お前らホントに仲が良いな」 と、笑いながら立ち去っていく。 「ほら、休み時間なんだからパソコン閉じる」 「……っ!」  もう片方の掌が伸びて勝手にファイルを閉じられる間、何度かそこをゆるゆると揉まれ、吐息が思わず漏れそうになるが、何とかそれを堪えた綾人は彼の手首を払うように、自ら席を立ちあがって鞄に手を掛け口を開いた。 「ゴメン、今日俺弁当だから、社食には行かない」 「マジ? 綾人料理出来るんだ」  驚いたように目を見開く……爽やかな好青年としか言いようのないその容貌を、上目使いでチラリと見上げ、早くも罪の意識に苛まれ綾人は直ぐに視線を逸らす。  目の前に居る越塚智と柏瀬綾人は同期入社だが、専門卒の綾人よりも大卒の智は二歳年上で……職場内では一八〇はあるであろう立派な体躯を持つ彼が、貧弱な上に積極性に欠ける綾人の保護者のような存在だと思われているようだった。

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