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 ――だけど、コイツは……。 「俺、綾人の作った弁当がいいな」 「……え?」 「聞こえなかった?」  ニッコリと屈託のない笑みを浮かべた彼の口端が、僅かに歪んで見えた時は、危険だと既に知っている。 「ちょっと見て」と、言われて覗いたスマートフォンの画面一杯に、何時撮ったのかも分からないような自分の痴態が映っているのを見た瞬間、浅はかな逃げ口上なんて、この男には通用しないと思い知らされた綾人は小さく「食べていいよ」と返事をしていた。 *** 「結構美味いじゃん。やっぱホモって女子力も高いの?」 「んっ……んぅっ」  どうして彼が使用されてない会議室の鍵を持っていたのかなんて分からない。だけど、いつ誰が来るか分からないような場所で行為を強要されるより、精神的にはまだいいように今の綾人には思われた。  椅子に座って自分の作った弁当を食べる智のペニスを、跪き口で愛撫し続けてもう何分になるだろうか?  同性愛者でもないくせに、男にペニスをしゃぶらせるなんて、きっと只の遊びだろうが、考えがまるで読み取れないから綾人の心はかき乱される。  元々、内気な綾人を何かと気にかけ、助けてくれた彼を好きになってしまうのに、さほど時間は掛らなかった。  マイノリティーな自覚はあったから、黙っていようと思ってたのに、酔った勢いで告白なんかしてしまったから、こんな関係になってしまったが、それでも嫌いになれないのは、それだけ彼を好きになってしまったからに他ならない。  智は綾人がゲイとバラさない条件の下に、様々な要求を突きつけてきたが、最初の内は直接綾人に触れるなんてしなかったし、勿論させもしなかった。

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