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「ここ? ああ……そういえば、付けてたな」 「ひッ……や、ああっ……ん」  プラスチックの貞操帯を取り付けたのは、昨晩の事だった。  大抵、嫌とか何とか言いながらも、綾人は智に従順だ。  それが自分に対しての恋慕の情から来ている事は十分に承知しているが、あまりに反応が初々しいから、ついつい苛めているうちに、情が湧いたのか元々自分にホモの要素があったのか……いつのまにか綾人の事を可愛いと思うようになっていた。 「乳首弄るの止めたら? そしたら落ち着くと思うよ」  だけど、まだその事を綾人自身には伝えていない。 「やっ…だぁ! とって、頭、おかしくなる…からぁ」  普段生真面目で大人しい彼が、甘えた声音で訴えながら、自ら脚をМ字に開き、揚句乳輪まで揉みしだくという痴態に思わず頬笑みながら、智は後ろポケットに入れた小さな鍵を取り出した。 「自分で付けてって言ったのに、綾人は我儘だな」 「……ちがうっ!」 「違うなんて言えるんだ。何なら動画で見せてやろうか?」  本当は、無理矢理『付けて』と言わせたのだが、冷たく智がそう言い放つと、唾を飲み込んだ綾人が小さく「ごめんなさい」と謝ったから、胸の奥がチクリと痛む。だが、そんな事よりも今は彼の痴態を愉しむのが先だ。 「あ、ホントに仕事始まる。ほら、そんな格好してないで、早く立てよ」  だが、いくら綾人が可愛いとはいえ仕事をサボっては些か不味い。  そう思った智は鍵をそのままポケットへと仕舞い、彼の傍らに膝を付くと、胸から指を打ち払い、その衝撃に喘ぐ姿を嘲笑いながら、シャツのボタンを無理矢理締めた。 「今日も家寄れよ。そうしたら取ってやるから」  顔を寄せ、優しい声音でそう囁くと、大きな瞳が泣きそうに揺れる。 「我慢できたら、ご褒美やるから」  少し癖のある猫毛を撫で、殊更優しくそう伝えると、顔を歪めた綾人はそれでも小さくコクリと頷いた。  その姿に……やっぱり胸がじくじくしたが、智はさして気にもしないで彼の身なりを整えてやると、「先に行くぞ」と言い残してから会議室を後にした。  きっと綾人が落ち着くまでには少し時間が必要だから、自分が先に職場に戻って、適当な言い訳をしておこうと思ったのだ。  家に来た時にいつもより少し優しくしてやりさえすれば、自分の事が好きな綾人は機嫌を直すと思っていたし、本来女性が好きな智は彼を可愛いと思っていても、まだ好きだと言えるだけの覚悟は持てていなかった。

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