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第4話

「リヅィア様、ほら、ご覧下さい」 「これが、『勃起』という状態か!」  朝一番に、男2人に股の間を真剣に見つめられる日がくるとは思わなかった。膝を閉じようとすれば、容赦なくディノに開かれ、股関節が軋む。  「ここをこうすればほら、もっと膨らみます」とか、得意げに、僕の陰茎を上下に擦っている。昨日散々いじったのだから、そりゃあ、心得ているだろうよ。 「ぬるぬるしたのが出てきて、更に刺激し続けると白いものが出ます、面白いです」 「確か昔読んだ文献の中で、乳首や尻の穴の中も性感帯に成りうるそうだ」 「そうなのですか」 「白いものが出ると同時に、頭の中に快楽物質が放出される仕組みのようだ」 「さすがはリヅィア様」  平たい胸を大きな掌で両端から掴まれ、親指で乳首をくるくると押しつぶされる。上に下に左右に引っ張られる度、次第に身体が熱くなり、震えてしまう。その様子が更に2人を楽しませているようで、行為は一向に止めてくれる気配がない。  ガリとどちらかの手の爪が、陰茎の先を掠めると同時に達してしまった。それに驚いたのか手の動きが止まる。指は離れたというのに、長く遊ばれた乳首には、触れられる感覚が残り、じんじんと痛む。 「面白かった。ありがとう、キール」 「もうよろしいんですか? 昨日はもっと量も勢いもありました。お見せしたかったのですが」 「また明日にしよう。キールが疲れている」  え、この実験、日課になるのか。やめてくれ。おかしなことになりそうで怖い。  王はぐったりと寝台に横たえる僕の頭を撫で、部屋を出て行った。「明日は尻の穴を試させてほしい」と聞こえたような気がするが、気のせいだろう。  ディノは頬を膨らませ不満そうだ。用意していた濡れた布で自分の手を拭い、それから僕の身体を清めてくれた。力加減を知らないのか、それとも、これがアウール人の普段どおりなのかはわからないが、痛い。肌は赤くなっていた。布を渡してくれれば自分で拭けるのに。  渡された服を頭から被る。  次いで、ディノは食事を運んでくれた。昨日ろくに食べられなかった分、今日は味わって食べたい。僕は、一言もしゃべらずに、匙を動かし続けた。幸いにも、ディノの癇に障るようなことはやらかさなかったようだ。  半分以上残ってしまったが、満足がいくまで食べられた。  食事の後には、勉強が待っていた。『先生』と呼ばれる男からアウール人のことを改めて教わった。 「この世界を作ったとされる神リー、その子孫が我々アウール人であり、広く知られているとおり不老不死の存在です。個人差はありますが、基本的に大らかで、他の種族との争いを積極的に招くことはありません。長い時間を持つ我々にとって、あなたたちのように短命な種族は、ふと気づけば、ぽこぽこ生まれぽこぽこ死んでいる、虫みたいな存在ですからね。虫と争うないというわけです」  さらりと酷いことを言われたような気がする。 「ただ、その生殖機能については見習いたいものがあります。我々が発情をするのは非常に稀です。恐らくは不老不死であるために、種の保存に関して淡泊なのだと言われています。もっと、我々の数が増えれば、この世界全体を収めることも可能なのでしょうがね」  なんだか怖いことを宣っている。  先生は、神への信仰について書かれた重厚な本であるとか、身体的特徴についての専門書を山ほど置いていった。  とりあえずは、これを全て読んでほしいとのことだ。帰り際に尋ねてみた。 「僕がアウール人になったことについてどう思われますか」  先生は、これまで細められていた眼を見開き、僕の衣服の襟元をたぐり寄せると頬を殴った。授業中、ずっとにこにこしてくれていたので油断をしていた。完全に失言だった。後悔しても遅い。これほどまでに自分達種族に誇りをもっている人が、僕なんかを仲間にと思っているはずがなかった。 「『アウール人になった』など軽々しく言わないことです。あなたは、ただ、王の温情で、不老不死を与えられた珍妙な虫です」  はい、虫です。珍妙な虫であります。  ディノといい先生といい、アウール人の性格について、個体差で済ませてしまっていいものか悩むところである。  幸いにもその一発で気が済んだらしく、先生は僕を絨毯に降ろすと、そのまま部屋を出て行った。  珍妙な虫、少し笑える。今朝のことを思い出しても、そのとおりの扱いだと納得できた。  ご飯も食べられる、暖かい寝床もある、服だって着てる、けれど、牢にいた日々よりも疲れる。不思議だ。  午後からは、屋敷の外に広がる庭に連れ出された。体力作り、らしい。大股で歩くディノの後を置いていかれないように必死でついていく。だから、歩幅の差を、体格差を考えてほしい。庭を一周し終わる頃には汗だくになっていた。「ダール人は情けないですね」、ディノに失笑された。  浴槽に連れて行かれてまた、丸洗いされる。そして、やはり、今朝の行為だけでは物足りなかったのだろう、陰茎をしつこくいじられ、乳首を丹念に洗われ、一度は気をやってしまった。体力的に限界だったらしく、僕はそこで意識を失い、目を覚ましたのは寝台の上だった。  窓の外は真っ暗で、夕飯を食べ損ねたことを残念に思った。ディノから白い紙と鉛筆を貰ったので、そこに○をひとつ書き、寝た。  ***  まだ僕が覚醒をする前から、その行為は始まっていたらしい。この時間を持てあました暇人どもめ。ディノが頭側を陣取り、僕の膝を開き固定をしている。足の間では、リヅィアが本を片手に、人差し指を眺めている。怖い。  やがて本が閉じられた。人差し指を小瓶に漬け込んでいる。人差し指、といっても僕の指3本分はあるように見える。まさかまさかと思っていると、それを肛門に捻り入れられた。痛い。嫌だ。無理。裂ける。 「固いし、きついな、これ以上は入らない」 「前も萎えていますね。何がいけないんでしょうか」 「勃起をしないと緩まないのかもしれないな。ディノ、乳首を触ってみてはどうだ? 足は紐か何かで固定しておこう」 「そうですね」  今日はどこまでの結果で満足してもらえるのだろうか。膝を曲げらた状態で縛られ、更に足首と手首も紐で固定された。せめて幅の広い紐にして欲しかった。力が入る度、どうしても引っぱってしまい、痛い。  乳首を押さえられ、引っ張られ、陰茎はなんとディノの口の中だ。顔はディノの両足で挟まれ、全く動けない。  リヅィアは人差し指を挿入することはあきらめてくれたらしく、それよりは細い小指で中を探ってくる。入るには入ったが、気持ちが悪い。 「ひっ」  突然、今まで感じたことのない刺激が全身に走った。乳首への刺激のせいでも、陰茎への刺激のせいでもない。中だ。リヅィアの小指が妙なところに触れたのだ。 「い、嫌。やめて」 「ここか」 「ひ、――っ」  勝手に陰茎が持ち上がる。そのまま一気に昇りつめてしまった。息が整わない。苦しい。全身が痺れている。  リヅィアは名残惜しそうに、指を引き抜いた。 「今日はここまでだな。指の先に、小さな凝りのようなものが触れてな、そこを強く抑えるといいようだ」 「明日は私にやらせて下さい」 「ああ」  「ああ」じゃないですよ、王様。僕の意思はどこにあるんですか。どこにもなかったですね、所詮虫ですから。  ようやくディノが身体をどけてくれた。首を左右に揺らせば、溜まっていた涙がぼろぼろと落ちた。 「キールが泣いている姿は特に面白かった。普段、あまり表情がないせいだろうな。新鮮で、もっと泣かせたくなる」  酷い。

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