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第6話
いつもより幾分早い時間、純の半歩後ろを雪人が歩く。
「体調崩したのか?」
誕生日の翌日に学校を休んだ事を問われ、雪人は戸惑った。
「うん、ちょっと…」
言葉を濁してやり過ごそうとしたが純は許してくれなかった。
「その様子じゃ襲われたんだろ?」
「…え…?」
雪人の足が止まった。
どうして純にわかってしまったのだろう。
「おまえには無理だ」
純は一瞥して冷たく言い放った。
雪人には言われた意味が理解出来なかった。
俺は子供じみているというのか?
それとも男として不能という事だろうか…。
だとしてもこんな風に言われなくてもいいのではないか。
落ちている気持ちがさらに深みにはまる。
一昨日の夜を思いだして視界がぼやけ、泣きたくないのに涙が地面に落ちた。
あの夜、逃れたいのに体が強張り指の一本も思うようにならなかった。
その間に女は雪人の服を全て脱がしベッドに運んだ。
「ほら…触って…」
女は雪人の両脚の上に跨がり、雪人の手を自らの胸元へと導いた。
素肌の生温かさと柔らかい感触に指先が震え息が乱れる。
「もっと…」
胸から腰、尻へと意思とは関係なく辿らされた。
カチカチと歯が鳴り、首筋に冷たい汗が滲む。
青白い肉体が別のおぞましいものに見えた。
「あら…?」
女は雪人の股の間に顔を寄せ、震える雪人のモノに手を添えた。
「可愛い…いいわ」
私がしてあげる…そう言う女の言葉を雪人は理解出来なかった。
「あっ」
小さな声が出てしまったのは記憶の限り己しか触れないような場所を他人に触られたから。
チロチロと舐められたその行為は驚きと恐怖でしかなない。
一向に形の変わらないそれを女は執拗にしゃぶってみたが…それでも雪人は反応しなかった。
「あなた…もしかして………」
女が何を言ったのか、聞こえなかった。
いや。
聞こえてはいたが、理解出来なかった。
“フノウ”
口の形はそう動いていた。
雪人は意識を手放した。
「…と、雪人」
幼馴染みの声にはっとした。
いつの間にか学校の階段の手前に立っていた。
「ほら、行こう」
先に階段を登り始めた純が雪人に手を差し出した。
無意識にその手を掴み見上げると、逆光と相まって純の背中に羽があるように見えた。
それは幼い頃に読み耽った童話に出て来た者のようだった。
「天使…?それとも…」
雪人にはその羽の正体がわからなかった。
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