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第13話
翌日、雪人は眠れないまま朝を迎えた。
起き出してすぐに冷たいシャワーを頭から被り、鉛が詰まったような頭に喝を入れた。
昨日のあれは夢だったのか?
まだ信じられない。
でも…忘れられない純の手の感触…思い出すだけで腰が甘く痺れる高揚感が事実だと思わせた。
この後どんな顔をして純に向かい合えばいいのか、悩ましい。
温度の低いお湯に体温を奪われてブルっと震え、我に返った。
「いつものように、大丈夫…」
小さな声で自分に言い聞かせる。
大丈夫、この想いは純に知られていない、大丈夫…。
「雪人、おはよう」
朝食のテーブルで純の父、真人から挨拶され雪人はいつものように応えた。
「おはようございます、真人さん」
名前呼びなのは、そうするようにと真人から求められたから。
「純はまだ寝てる?しょうがない息子だな、全く」
優しく微笑みながら自分の息子の話をする純の父親。
雪人は自分の父親よりも純の父、真人の方が好きだった。
相性、というのか。
雪人の父親は雪人に対して高圧的な態度で好きになれない…。
「僕はもう出るけど、またおいで」
「ありがとうございます。行ってらっしゃい」
純の父親が自分の父親だったらいいのに、真人の背中を見送りながら雪人は幾度となくそう思った。
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