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第14話

「雪人、行こう」 朝食を終え身支度を整えたタイミングで純が雪人を呼びに来た。 「先に家に教科書を取りに行かないと」 「分かった」 昨日家には帰らず純の家に来てしまったから授業に必要な物を取ってから登校しないといけない。 「父さん、出かけたかな」 朝から父親の顔を見たくない。 普段から雪人は実の父親との折り合いが良い方ではない。 誕生日の夜の顛末は余す所なく雪人の父親の耳に入り、 後で散々嫌味を言われた。 一方的で、自信過剰、そして人を惹きつける。 それが雪人の父、芳人だ。 自分と父は全く似ていない。 日頃からそう思っていた。 雪人の容姿は父より母に似ている。 性格は父より叔父に似ている。 父との共通点が見つからない。 分かり合えない。 黙って玄関から中に入り自室に滑り込んだ。 必要な物をカバンに入れ、机の引き出しを開ける。 それ、はファイルの下にそっと置かれていた。 一目見やって元に戻す。 誰も知らない一日一回のルーティーン。 雪人はそっと部屋を出た。 幸い教科書を取りに帰ったタイミングで父親に見つかる事は無かった。 ほっとしながらも雪人は昨日の出来事がチラチラ頭に浮かび純とはどこかぎこち無い。 今日も純は雪人の半歩前を歩いていた。 だが純はいつも通り、に見える。 近すぎない距離で一緒に黙って学校まで歩いていった。

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