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第16話

むせるように甘く香る薔薇の花の中で純に唇を奪われた。 雪人は理解出来ない。 …どうして純は僕にキスをするのか…? 純にされるがままキスを受け入れているのは驚きはしたが嫌ではなかったから。 だから雪人は拒絶しなかった。 互いの目は開いている。 唇を合わせながら純は雪人の瞳の奥に孤独を見ていた。 父親との確執、母親不在。 同い年の子供達とは線を引き、交わろうとせず頑なに内に閉じこもる…。 純が三ヶ月の時に雪人が生まれ、それから二人は一緒に育てられた。 純の父親である黒瀬真人は雪人の父、白鳥沢芳人の実の弟だが婿養子という立場で純の母親の姓を名乗っている。 優しくて頭が良い、そして時々冷たい視線で雪人を射抜く。 親子だけあって、純はそんな真人とよく似ている。 だが純は雪人限定で優しく、雪人以外には分からないかもしれないが、他人に対してはとても冷ややかだ。 雪人が特別。 雪人も純に対しては特別な感情を持っていた。 純が好き。 いつの頃からか雪人は純に好意を抱いていた。

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