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第19話
「え?」
雪人は信じられなかった。
「クリスマスは梨花が泊まりに来る」
父親にそう言われたのだ。
梨花は雪人の許嫁だ。
雪人の誕生日に来ていた長い黒髪の少女。
あの夜が頭を過ぎり、雪人は恐怖を思い出した。
…もしかして…また…?
「でも…僕は…「今度は上手くいくかもしれん」」
雪人の言葉は芳人に遮られた。
…絶対に無理…何で…どうして…?
目の前がぼやけるがそんな事に構わず芳人は話し続ける。
「お前も男になれ」
…ショックだった。
たいして知りもしない相手とどうこう出来る訳が無い。
だが芳人には何を言っても聞き入れてもらえないだろう。
それに自分は純が好き。
この事はどんな事があっても芳人に隠し通さなければならない。
昼前に芳人が仕事に出掛け、雪人は一人家で過ごした。
もう冬休みになり学校は休みになっている。
雪人は長期休暇が嫌いだった。
クラスメイトには会いたくはないが、学校では長い時間純と一緒に過ごせる。
それに…家にいると父と顔を合わせる時間が長くなる…。
純に会いたい…。
もっと触れられたい。
意識すればするほど会いに行くチャンスを見失う。
黒のタートルネックシャツの胸元を握る指から血の色が失せ、白く震えていた。
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