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第27話
「な…何…!」
ビックリしたせいで反応は遅れてしまったが両手で梨花を押しのけた。
「キスなら雪人さんでも出来るでしょう?」
確かにキスならば唇が触れれば成立するかもしれないが…そういう問題ではない。
「僕は君とはしたくない…」
雪人は梨花を睨みつけながら言うが梨花は目を細めて口角を上げる。
「…なぜ?…するんでしょう?」
女の顔で薄い笑みを浮かべる梨花に雪人は背筋を凍らせた。
…無理だ…無理だ、無理だ!
だって…
「…出来ない…君とは…出来…ない…」
息が上がり、雪人の声が途切れ途切れになる。
「…?」
…おかしい…息苦しくて額に汗が溜まる。
「雪人…さん…」
梨花の冷たい手のひらが雪人の額を拭う…。
「ほら…ね…。これなら…」
梨花の手は頬を撫で雪人の首筋に爪を立てた。
人の気配で雪人は目を覚ました。
目は覚めたが…起き出す気力は無かった。
朝なのに酷く疲れていて、何もする気になれない。
誰かの声が自分に対してのものでも…今は聞きたく無かった。
…だから目を閉じたまま、聞こえないふりをした…。
「…と、…雪人…」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれると、純の顔が間近にあった。
「おはよ。もう夕方になるし、そろそろ夕食にしよう」
「…ん…」
ベットから這い出でて己を見ると下着一枚着けていなかった。
…あぁ、昨日梨花が…
昨日の記憶は断片的で…頭痛に思考を遮られる。
「随分と熱烈に愛されたんだね」
純の言う意味が分からない。
「シャワー浴びたらそっちに行く…」
雪人はふらつく体でバスルームに向かった。
取っ手を捻り熱めのお湯を浴びて、少しづつ頭が冴えてくる。
「…昨日は梨花が来て、夜迫られて…ッ!」
鏡に映る自分の姿に驚いた。
雪人の体中に赤い鬱血が無数あった。
首から脚まで。
…梨花の、あの口角の上がったあの唇で自分は犯された…
…雪人はそう思った。
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