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第28話

「雪人、冷めるよ」 純の言葉で現実に引き戻された。 「うん…」 純と向かい合って席に着いと雪人は、ロールキャベツをナイフで刻んで外側のキャベツを剥がしスプーンで中身の挽肉をスープと一緒に口に運んだ。 二口啜ってスプーンをテーブルに置く。 「ご馳走様」 食欲なんてある訳なく、純が来なければ雪人はずっとベットに引きこもっていただろう。 「ずっと考える程、あの子がそんなに良かったの?」 テーブルに肘をつき組んだ指に顎を乗せ、幾分機嫌の悪い純が雪人に問いかけた。 「…そうだよ」 見え透いた嘘。 「忘れられない…」 言葉と表情が噛み合わない。 歯を食いしばっても涙がぽろぽろと頬を伝った。 忘れたい…記憶から消し去りたい。 視界が涙で歪むとふわりと暖かな感触。 「…意地の悪い事、言った」 純に頭を抱かれ、その指をきゅっと握った。 こんな時でも、純に触れられると素直に嬉しかった。 「行こう、雪人」 頷いて、席を立った。 「…やあ…んん…」 どうしてこうなるのか、雪人は分からなかった。 でも、一人より純と二人がいい。 シャツは肘に引っかかり、胸には純の頭があった。 梨花の残した赤い跡をなぞるように純が舌を這わす。 胸の間を、尖った先端を、肋骨の溝を。 枕とクッションで背中を支えて座っていたはずなのにいつの間にか押し倒されて、雪人は冷たいシーツを手に握っていた。

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