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第37話

いつものように純と夕食をとり、風呂に入った。 途中で純が入ってくるかもしれないと素早く済ませたがそれは杞憂で終わった。 ほかほかと温まった体を冷やさないようにキルトジャケットを着込んで純の部屋に戻った。 「今日は早いね、雪人」 そう言って純はあっさりと部屋を出ていった。 時刻は夜十時。 布団に入るにしても眠るにはまだ早い。 「今朝、だらだら寝るんじゃなかった」 雪人は今朝の自分の行動を少しだけ反省した。 反省した所で何かが変わる訳では無いのだが。 「あ、万年筆…」 不意に今朝の事を思い出した。 …今の時間なら真人は部屋にいるだろうか。 雪人は朝渡せなかった物を届けに行こうと純の部屋を出た。 二度ノックをしてドアノブを回す。 「雪人です。真人さん?」 …いない。 またしても真人は部屋にいなかった。 居間にも自室にも真人の姿がない。 主の居ないそこは寒々しい空気を含んでいた。 …まさか…ね。 念の為に雪人は真人の寝室に向かった。 夜とはいえ大人が眠るには早すぎる。 …寝室に何か用事…とか…? そんな事しか思い浮かばず自分の想像力が子供並だと気づいて雪人は気落ちした。 だがきっと子供の方が雪人よりもっと豊かな想像をするだろう。 将来の夢を見ることも空想で遊ぶことも雪人は一度もした事が無かったのだから。

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