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第38話
朝の出来事を思い出し、雪人は最初に中の様子を廊下から伺った。
「よかった」
中から声が聞こえる事は無かった。
ほっとしてノックをするが返事がない。
誰もいないのかもしれない。
純の部屋に帰ろうとしたが真人が眠っている可能性もあるからと考え直し、そっとドアを開けた。
広々した部屋に落ち着いた色合いのベッドと家具が配置されている。
やや乱れたキングサイズのベッドは無人だった。
「…ここにもいない…」
部屋を出ようとしたその時、奥から水音がした。
「浴室にいるのかな」
真人がシャワー中なら出直せばよかったのに、雪人は何も考えずに浴室の側に吸い寄せられてしまった。
そして見た。
ガラスのドアの向こうにぼんやりと見える人の姿を。
「…っあ」
ビックリして声が出てしまったが慌てて手で口を塞いだ。
立ち上る湯気が着きやや不透明なガラスの向こうに一人分より大きいシルエットが見えたのだ。
…何をして…?
そう思った時 肌がぶつかるような破裂音とくぐもった男の声が中から聞こえた。
「…ぐっ…ぁあ……ゃ…っ……」
パンッパンッと濡れた破裂音がするも シャワーの音もあって全てが不協和音のように雪人の心を掻き乱した。
驚きと恐怖で暫く立ちすくんでしまったが心を奮い立たせて雪人は純の部屋に戻った。
ほっとして足元の違和感に気づくと右足は裸足だった。
慌てていたせいで段差も何も無い所で躓き、脱げてしまったのだ。
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