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第39話
鼓動がうるさいほど鳴り響く。
雪人がさっき見たものは…。
…ショックだった。
湯気のせいで幾分ドアは磨りガラスのように中を見えなくしていたが全てを隠す事は出来なかった。
濡れた肌がぶつかる音が鼓膜に張り付いている気がする。
扉一枚隔てていたのに温度や湿度まで想像し、感じてしまった。
「…んで…どうして…」
全身の力が抜け、腰を降ろしていたソファーベッドに体を倒した。
…父が、自分の兄弟と…
動揺が治まらないばかりか思い出して身体が熱くなった。
「あ…ぁ…」
両手で指の跡がつくほど自分自身を強く抱きしめても熱は引かない。
じっとうずくまり呼吸を整えようとしてもなかなか上手くいかなかった。
動揺と吐き出せずにいる熱。
「…も…どうしよ…」
もぞもぞ動き出した時、部屋のドアが開いた。
「雪人、スリッパ忘れた?」
少し揶揄うような純の声にはっとして雪人はドアの方を見た。
赤らんだ顔に涙ぐんだ目。
純はそんな雪人を見て確信した。
雪人はアレを見た。
それは純が雪人をに見せようとしていたモノだった。
…雪人を手に入れる為に。
…雪人を堕とす為に。
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